近年、公共交通システムの新しい運用形態として、オンデマンド公共交通システムの導入が各地で進められています。
このウェブサイトでは、群馬県玉村町で2024年10月から2025年3月まで、たまGO(デマンド乗合タクシー)として運用テストが実施された時の、利用実績データを元にして分析結果を掲載しています。
本内容が、今後のたまGOシステムの運用展開、そして他の地域でのオンデマンド交通システムの導入検討・運用時の参考資料となれば幸いです。
たまGOの運用テストの概要
たまGOの運用テストは、玉村町全域と伊勢崎市の一部地域にて実施されました。乗降地点は玉村町190地点+伊勢崎市民病院の計191地点が配置されました。
玉村町と伊勢崎市の一部を運行エリアとするデマンドタクシー「たまGO」は、スマートフォンアプリ、玉村町公式LINE、または電話で予約が必要です。
運行時間は9:00~16:00(年末年始除く)、町内200円、伊勢崎市民病院400円(未就学児無料)です。乗降地点は町内に190ヶ所、伊勢崎市民病院を含みます。アプリでは地図上での乗降地点選択などが可能です。
予約ルールは、利用者が効率的かつ円滑に乗車できるよう、予約のタイミング、方法、および運用上の注意点について明確に定められています。
主な予約ルールと仕組みは以下の通りです。
1) 予約のタイミング
データおよび公式ガイドによると、予約可能な期間は以下のように設定されています。
• 予約開始: 利用日の**1週間前(7日前)**から可能です。
• 予約締切: 乗車希望時刻の20分前までとなります。
• 運用時間: 実際の運行および予約可能な時間枠は午前9時から午後4時までです。
2) 予約方法と受付時間
利用者の利便性に合わせて3つの窓口が用意されています。
• 専用アプリ(MONETアプリ): 地図上での地点選択が可能で、24時間受け付けています。
• 玉村町公式LINE: 専用メニューから24時間予約可能です。
• 電話予約: たまGO予約センター(0274-42-XXXX)にて受け付けています。受付時間は午前8時30分から午後4時30分までです。
◦ 初回利用時には電話番号と氏名の登録が必要です。
◦ 車椅子を利用する場合は、電話での予約が必要となります。
3) 年末年始の特別ルール
• 運休期間: 12月29日から1月3日までは運休となります。
• 予約センターの休業: 同期間は電話予約も休止されますが、アプリやLINEからは予約が可能です。
• 年始の電話予約: 1月5日から1月10日運行分については、1月4日から電話予約が可能になります。
4) 乗車・運用上のルール
• 時間厳守: 予約時刻に乗車場所にいない場合、車両は待機せず次の目的地へ出発します。
• 乗り合い: 他の利用者との乗り合いが前提であり、予約状況によって車両が迂回することや、到着時間が前後することがあります。
• キャンセル・変更: 急ぎの場合や到着時間を確定させたい場合は、一般のタクシー利用が推奨されています。
これらのルールを例えるなら、**「町全体で共有する大きな時刻表のないバス」**のようなものです。決まった時間にバス停へ行くのではなく、自分が必要な時間を事前に「宣言(予約)」することで、町を走る車両があなた専用の停留所をルートに組み込んでくれる仕組みといえます。
地区別人口密度と、たまGOの乗降地点
玉村町の面積は約25.78平方キロメートルです。群馬県内の自治体としては比較的小さめの町で、全域が平野部に位置しています。人口は約35,600人です。人口密度は、約1380人/平方キロメートルです。玉村町の人口密度を色別に段階的に塗り分けた図面を、GIS(地理情報システム)で作成して全乗降地点をプロットして分析を行いました。
地区別人口のデータは、2020年に実施された国勢調査のデータをe-Statの地理統計情報システムからダウンロードして、地理情報システムに取り込んで地区別人口密度の図を作成しました。
以下の地図では、玉村町の地区別人口密度を色別に段階的に塗り分けました。 玉村町を東西方向に走る県道142号の中央から西側にかけて、人口密度が高い地区が見られます。人口密度図では、各地区が薄い青色で区分されていて、右下の凡例の人口密度の数値の単位は「人/平方キロメートル」です。

地区別人口密度の図に、乗降地点の黄色の〇マークを重ねて表示したのが、下の図です。図をクリックすると大きい図が表示されます。乗降地点コードも併せて表示してみました。尚、右上側の「999」の乗降地点は、伊勢崎市民病院です。

たまGOの乗降地点を調べてみると、路線バスのバス停と重なる場合が多いことが判ります。バス停の位置を、赤色の▲マークにして、乗降地点の図に上書きしてみたのが次の図です。黄色の〇マークと赤色の▲マークが重なっているのが、良く分かります。また、黄色の〇マークだけが分布している区域も存在していることが分かります。

次に、たまGOの乗降地点の配置が、玉村町の全域をどの程度、網羅しているか調べてみました。まず乗降地点の黄色の〇マークから、半径300mの薄い黄色の円を描いてみました。すると、薄い黄色の円の中に含まれていない地域がかなりあることが分かりました。

そこで、乗降地点の黄色の〇マークから、半径500mの薄い黄色い円に拡大してみました。今回は、ほぼ玉村町全域が黄色の円の中に納まりました。よって、町内のどの場所でも、約500m以内にたまGOの乗降地点が設けられていることが分かりました。

たまGOの利用実績データの分析
利用実績データを元にして、乗降地点別利用回数や乗車と降車地点の動線、乗り合い運用の実績などについて分析しました。
提供された利用実績データ、および乗降地点情報に基づき、2024年10月から2025年3月までの全期間における各地点の乗車回数と降車回数の合計値を集計しました。
「たまGO」は予約に応じて運行されるため、乗車(出発地)と降車(目的地)の回数を合わせることで、その地点がどれほど頻繁に利用されているか(地点の活発度)が見えてきます。
乗車・降車回数 合計ランキング(主要拠点)
利用実績データから算出された、特に利用頻度の高い上位10地点の集計結果は以下の通りです。

地点別の特性分析
1. 絶対的なハブ:玉村町役場 (2)・とりせん前(10)・B&G海洋センター(36) これらの地点は、乗車と降車の回数がほぼ同数であり、町内移動の往路・復路双方の起点・終点として機能していることがわかります。
2. 目的地の性格が強い地点:角田病院前 (21)・市民病院北口 (999) これらの地点は、乗車回数よりも降車回数の方が多い傾向にあります。これは、自宅などの地点から「通院」のためにこの地点を訪れ、診療を済ませた後に再び予約して帰宅するという流れを反映しています。
3. 出発地の性格が強い地点:南玉公園前 (28) 住宅街に近いこの地点は、乗車回数が降車回数を上回ることが多いです。住民がここから役場や病院、スーパーなどの拠点施設へ向けて出発する際の「玄関口」としての役割が強いことを示しています。
曜日別利用者数
利用実績データから、曜日別の利用者数の合計値を集計しました。火曜日と金曜日が利用者数が、約660名と多くなっています。一番利用者が少ないのは、日曜日で平日の半分程度でした。これは「たまGO」の利用が、町役場や病院への通院、スーパーマーケットなどでの買物が主体であり、休日のレジャー目的での利用は少ない傾向であると考えられます。

時間帯別利用者数
「たまGO」の利用時間帯別利用者数を、利用実績データの乗車時刻を元にして集計しました。午前10時台が最も利用者が多く、次いで午前9時台に需要が集中していることがわかりました。集計結果の詳細は以下の通りです。

乗車地点と降車地点のパターン抽出
利用実績データの各レコードに乗車と降車の地点コードがありますので、その2地点を結ぶ経路パターンを抽出して、どれくらいの経路パターンが使用されたか集計しました。同じ2つの地点を、逆方向に乗車した場合も別のパターンとして集計したところ、約1,100パターンの経路が抽出されました。乗降地点が190地点もあるため、理論的には非常に多くの経路パターンがありますが、実際の利用経路はやや限定されている結果となりました。
全経路パターンを動線として、地点間を緑色のラインで結んで地図上にプロットしてみました。乗降地点が玉村町全域に分散しているので、経路パターンも町全体を覆う蜘蛛の巣のように張り巡らされています。

利用回数が高い経路パターンのみを抽出して、回数が多い順にリストアップしました。角田病院前(21)とB&G海洋センター(36)の間の経路パターンが、双方向とも利用頻度が特に高い結果となりました。この経路パターンの利用実績データを調べたところ、午前中に地点36から地点21に移動して、午後には地点21から地点36に逆に移動する利用の傾向が見られました。平均所要時間は、利用実績データの所要時間を合算してから利用回数で、割って算出しました。やはり市民病院北口 (999)に関わる経路パターンの所要時間が30分以上となっています。
利用回数が多い経路パターン表

次に利用回数が多い経路パターンのみを、地図上に乗車地点から降車地点まで矢印で結んで示しました。赤色の矢印が一番多く、次にオレンジ色、3番目が黄緑色の矢印です。

主要な経路パターンの図を見ると、矢印はいろいろな方向や地点向かっていて、分散傾向でした。主要なハブ地点に向かう傾向は見られますが、特定経路・特定地域に利用が偏っていることはありません。また、人口密度の比較的高い地域にて、利用回数が高いこともないようです。
乗り合い運用
「たまGO」では、乗合タクシーを前提としているので、途中で別の乗客を乗せたり、あるいは、同じ乗降地点から複数の乗客を乗せて、運用の効率化を図る仕組みとなっています。利用実績データから乗り合い運用の実績を調べてみました。同一時刻に同一地点から乗降したデータの組合せを抽出して、乗車地点毎に以下にリストアップしました。同時利用した利用者の降車地点も、各利用者毎に調べてみて、同一グループによる利用なのか、乗合に寄る利用なのか判別できるようにしました。以下の記述では、同一日時時刻に同一地点で2名以上で乗車したケースを列挙しました。さらに、各利用者の降車地点名と地点コードを記載しました。そして、降車地点が異なる場合は、乗り合い運用であると判定しました。
1. 玉村町役場(地点コード: 002)での同時乗車
町の中心拠点である役場では、最も頻繁に乗り合いが発生しています。
• 2024年10月3日 11:30(2名)
◦ 利用者1:みつわ団地入口(地点コード: 034)
◦ 利用者2:古作クリニック玉村分院(地点コード: 005)
• 2024年10月5日 09:00(2名)
◦ 利用者1:角田病院前(地点コード: 021)
◦ 利用者2:南小学校東(地点コード: 059)
• 2024年10月5日 09:45(2名)
◦ 利用者1:五料(南)(地点コード: 040)
◦ 利用者2:老人福祉センター(地点コード: 004)
• 2024年10月19日 10:00(3名)
◦ 利用者1:老人福祉センター(地点コード: 004)
◦ 利用者2:老人福祉センター(地点コード: 004)
◦ 利用者3:芝根小学校東(地点コード: 035)
• 2024年11月17日 11:10(2名)
◦ 利用者1:宇津木医院前(地点コード: 053)
◦ 利用者2:セブンイレブン玉村福島店(地点コード: 174)
• 2024年11月17日 12:00(3名)
◦ 利用者1:福島橋(地点コード: 073)
◦ 利用者2:五十嵐医院下之宮出張前(地点コード: 032)
◦ 利用者3:芝根小学校東(地点コード: 035)
• 2025年3月7日 11:30(2名)
◦ 利用者1:みつわ団地入口(地点コード: 034)
◦ 利用者2:みつわ団地入口(地点コード: 034)
2. とりせん前(地点コード: 010)での同時乗車
買い物拠点でも以下の乗り合いが確認できます。
• 2024年10月5日 12:00(3名)
◦ 利用者1:五十嵐医院下之宮出張前(地点コード: 032)
◦ 利用者2:玉村町役場(地点コード: 002)
◦ 利用者3:玉村町役場(地点コード: 002)
• 2024年12月24日 13:00(2名)
◦ 利用者1:森下団地(地点コード: 049)
◦ 利用者2:森下団地(地点コード: 049)
• 2025年1月28日 09:55(2名)
◦ 利用者1:市民病院北口(地点コード: 999)
◦ 利用者2:市民病院北口(地点コード: 999)
• 2025年2月20日 10:15(2名)
◦ 利用者1:市民病院北口(地点コード: 999)
◦ 利用者2:南玉公園前(地点コード: 028)
• 2025年3月27日 11:00(2名)
◦ 利用者1:南玉公園前(地点コード: 028)
◦ 利用者2:南玉公園前(地点コード: 028)
3. 老人福祉センター(地点コード: 004)での同時乗車
施設利用者の帰宅時と推測される乗り合い事例です。
• 2025年1月9日 14:50(2名)
◦ 利用者1:南玉公民館前(地点コード: 027)
◦ 利用者2:斎田(南)(地点コード: 014)
• 2025年2月6日 14:50(2名)
◦ 利用者1:斎田(南)(地点コード: 014)
◦ 利用者2:南玉公民館前(地点コード: 027)
• 2025年3月6日 14:50(2名)
◦ 利用者1:斎田(南)(地点コード: 014)
◦ 利用者2:南玉公民館前(地点コード: 027)
4. 角田病院前(地点コード: 021)での同時乗車
通院後の帰宅と思われる事例が特定の時間帯に集中しています。
• 2025年1月26日 14:50(2名)
◦ 利用者1:角渕(東)(地点コード: 157)
◦ 利用者2:消防団第七分団前(地点コード: 031)
• 2025年2月8日 14:50(2名)
◦ 利用者1:角渕(東)(地点コード: 157)
◦ 利用者2:消防団第七分団前(地点コード: 031)
• 2025年2月15日 14:50(2名)
◦ 利用者1:角渕(東)(地点コード: 157)
◦ 利用者2:消防団第七分団前(地点コード: 031)
5. その他の地点での同時乗車
• 重田家住宅(地点コード: 155)
◦ 2024年10月23日 11:16(2名):玉村町役場 (002), 下之手公民館 (166)
• B&G海洋センター(地点コード: 036)
◦ 2024年12月10日 10:30(2名):玉村町役場 (002), 玉村町役場 (002)
• 五料(南)(地点コード: 040)
◦ 2025年2月20日 10:15(2名):フレッセイ玉村店 (003), とりせん前 (010)
「たまGO」は予約に基づき、1人でも運行されますが、このように同一時刻・地点での予約を「束ねる」ことで効率的な運行を実現しています。特に役場、病院、スーパーといった「生活の拠点」において乗り合いが顕著に発生していることが実績データから裏付けられています。
分析のまとめ
今回の実績データの分析から、たまGOの乗合タクシーが市民の身近な交通手段として利用されたことが分かりました。乗車から降車までの経路パターンは、市内をほとんど網羅する網の目のように広がっていて、乗合タクシーを実際に乗合う運用も利用実績データから読み取ることができました。今後、さらにこの交通サービスが玉村町の市民の間に定着すれば、安価で便利な市民の足として、利用が増えていくと予想されます。他の地域におけるデマンド公共交通の展開については、最初から地域の人口分布や、主要な拠点施設、地形などを考慮して、乗降地点を配置して運用していくことが、市民の足として普及していくためのポイントになると考えられます。
本分析内容の元となった玉村町の「たまGO」の運用テストの各種データ資料は、「公共交通オープンデータセンター」のWebサイトからダウンロードいたしました。